結局のところ今年はどんなルール改正が行われたのか【2020年度野球規則改正】※5/2一部訂正

※5/2
内容に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

こんにちは、メルマウです。

野球から長く離れているので、規則について改めて見直す機会も減ってしまっているような気がします。
そこで、今年度行われたルール改正について、公示から3ヶ月が経過した今(?)改めて確認していきましょう。


〇結局のところは…
結論から言うと、今年度の日本での規則改正は、
運用上は特に大きな変更はありません。
以上です!
…というわけにもいかないので、内容別に細かく見ていきましょう。
下の2項目については、規則解釈が変更されています。
今年行われたルール改正は16項目あります。

以下引用:日本野球規則委員会「2020年度野球規則改正」
PDFはこちら(NPBホームページ)


〇日本では導入・適用されないルール

105.10g)の後段として次を追加する。
 以下はマイナーリーグで適用される。先発投手または救援投手は、打者がアウトになるか、一塁に達するかして、登板したときの打者(または代打者)から連続して最低3人の打者に投球するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

まずこちらは、昨年アメリカマイナーリーグで試行され今年からメジャーリーグでも導入される、通称「スリーバッターミニマム」ルールです。
日本では昨年から「ワンポイント禁止ルール」などと呼ばれ話題になっていました。
アメリカで行われた規則改正に合わせて日本でも文言は改正されたものの、今年度は適用されず、実際に運用するか否かについては今年のアメリカでの実績を見て来年度以降に検討されます。そのためにも野球をやりたいですね…

115.10m)を次のように改める。
 ①同(1)の(マウンドに行ける回数)「6回」を「5回」に改める。
 ②同(2)本文の最終の文「ただし、次の場合を除く。」を次のように改める。
ただし、すでにマウンドで行なわれている相談に途中から監督、コーチまたは野手が加わっても、新たな回数には数えない。さらに、次の場合もマウンドに行く回数には数えない。
 ③同(2)(B)を次のように改める。(下線部を改正)
野手が、投手と話すためでなく、単にスパイクの汚れを払うためにマウンドに行った場合。
 ④同(2)(D)を次のように改める。(下線部を追加)
攻撃側チームによる選手交代の通告後、投手が次の1球を投じるか、または、プレイをする前に、野手がマウンドに行った場合。
 ⑤同(2)(E)~(G)を追加する。
 (E)審判員のタイム(たとえば、審判員や選手が負傷したり、観客、物体、または球場整備員がフィールド上に現れたり、あるいは監督がリプレイ検証を要求したときなど)による試合の中断の際、野手が試合の再開を遅らせることなく、マウンドに行った場合。
 (F)フェンス越えの本塁打を打たれた後に、野手がマウンドに行った場合。ただし、打者走者が本塁に達する前には自分の守備位置に戻らなければならない。
 (G)イニングの間および投手交代の間に適用された時間制限の中で、野手がマウンドに行った場合。
 ⑥同(4)を追加する。
 (4)マウンドに行く回数制限の施行──監督またはコーチが、チームに与えられたマウンドに行ける回数を使い果たした後に、マウンドに向かうためにファウルラインを越えてしまえば、その救援投手の第1打者が打撃中でない限り、その投手を交代させなければならない。もし第1打者の打撃中であれば、規則5.10g)により、その打者が打撃を完了するまで投げ続けなければならない。
 監督またはコーチが、マウンドに行く回数に例外が適用されると思う場合は、ファウルラインを越える前に審判員に確認しなければならない。
 本規則の運用によって突発的な投手交代を行なわなければならないとき、救援投手がブルペンでウォームアップをしていなかった場合、監督またはコーチは、マウンドに行く回数制限を超えて違反したことにより、試合から退けられる。この場合、審判員は、その救援投手に対して、試合に出場するために必要な準備の時間を与えることができる。
 野手が、チームに与えられたマウンドに行ける回数を使い果たした後に、審判員に自分の守備位置に戻るよう注意されたにもかかわらずマウンドへ行けば、その野手は試合から退けられる。しかし、この場合、投手交代の必要はない。

こちらは既にメジャーリーグで運用されていて日本では適用されていない(各団体が内規を定める)ルールです。アメリカでの改正に文言を合わせた形です。
アメリカではタイムの種別に関係なく「タイムを取ったら1回、1試合に5回」と、日本の多くの団体の方式よりも分かりやすく単純になっています。
そして続いて書いてあるのはその回数に含まれない場合についてです。
個人的にはこの方式はわかりやすくていいとは思うんですけどね…

〇記録員に関するルール

149.01を次のように改める。
 ①同(a)の2段落目を次のように改める。(下線部を追加)
 記録員は、ホームチームにより割り当てられた新聞記者席内の所定の位置で試合の録をとり、記録に関する規則の適用に関して、たとえば打者が一塁に生きた場合、れが安打によるものか、失策によるものかなどを、独自の判断で決定する権限を持つ。
 ②同(a)の4段落目以降を次のように改める。(下線部を改正)
 クラブ職員およびプレーヤーを含むすべての人は、その決定について記録員に異議唱えることはできない。記録員は、あらゆる記録を決定しなければならない。記録員の判断を要することが起たとき、記録員は、プレイの進行に沿って次の打者が打席に入るまでに記録を決定するように最善の努力をする。記録員は、その裁量で、試合終了後あるいはサスペンデッドゲーム宣告後24時間以内に、当初の決定を最終の決定とするか、変更するかを決定する。
 メジャーリーグのプレーヤーまたはクラブは、試合終了後あるいは決定の変更後72間以内に、書面または認められた電子的手段によってコミッショナー事務局へ通知て、運営部門責任者に記録員の決定を見直すように要求することができる。(以下省略)
同(c)後段を次のように改める。(下線部を追加)
 記録員は、その任務の遂行にあたり、監督、プレーヤー、クラブ役職員、報道関係ら侮辱的言動を受けた場合には、いかなるものでも然るべきリーグ役職員まで報告しなければならない。

こちらは(公式)記録員に関する規則で、試合の運用に関係してくるルールではありません。記録員席の場所についてや、審判員の判定と同じく記録員の判断についても“抗議”はできないことについてなどが強調されました。

〇投球が挟まることに関して

35.06b)(4)(I)前段を次のように改める。(下線部を改正)
 四球目、三振目の投球が、捕手のマスクまたは用具、あるいは球審の身体やマスクまたは用具に挟まって止まった場合、1個の塁が与えられる。
45.06c)(7)を次のように改める。(下線部を改正)
 投球が、捕手のマスクまたは用具、あるいは球審の身体やマスクまたは用具に挟まって止まった場合──各走者は進む。

これまでは捕手や球審のマスクや道具にボール(投球)が挟まった場合にランナーは進塁できることとなっていましたが、そこに「球審の身体」が追加されました。

〇タッグ(タッチ=“触れること”)に関するルール

25.05b)(2)【原注】を追加する。
【原注】投球が打者の身に着けているネックレス、ブレスレットなどの装身具にだけ触れた場合には、その打者が投球に触れたものとはみなさない。
15)定義76の最終段落として次を追加する。
 本定義では、プレーヤーが身に着けているネックレス、ブレスレットなどの装身具は、プレーヤーの身体の一部とはみなさない。
16)定義80を次のように改める。(下線部を追加)

 プレーヤーまたは審判員の身体はもちろん、着用しているユニフォームあるいは用具(ただし、プレーヤーが身に着けているネックレス、ブレスレットなどの装身具は除く)のどの部分に触れても〝プレーヤーまたは審判員に触れた〟ことになる。

ヒット・バイ・ピッチ(死球、“デッドボール”)またはタッグ(タッチ)の際に、ボールそのものやボールを保持する野手のグラブや手が選手に触れることに関して、「装飾具」には触れても触れたことにはならない、ということです。身体そのものか、ユニフォームまたは用具に触れないといけません。
この点は正直肉眼で判定するのは難しいかもしれません。チャレンジをはじめとするリプレイ検証の際にスローモーションでその瞬間があったら、判断の根拠となります。
似たようなルール改正が2年目にも行われていて、「グラブの紐が当たっただけではタッグとはみなされない」ことになりましたが、その追補版と考えていいでしょう。
これはあくまでも審判の目線で言う完全に個人的な意見ですが、学生野球をはじめとする一部のアマチュア野球ではこういった装飾具の使用を禁止しています。
その特別規則の根拠としてこのルールを挙げることもできるでしょう。

〇投手の投球動作に関するルール

55.07a)(1および同(2を次のように改める。(下線部を改正)
 打者への投球動作を起こしたならば、中断したり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。
65.07a)(2)【注2】を次のように改める。(下線部を改正)
 (1)(2)項でいう〝中断〟とは、投手が投球動作を起こしてから途中でやめてしまったり、投球動作中に一時停止したりすることであり、〝変更〟とは、ワインドアップポジションからセットポジション(または、その逆)に移行したり、投球動作から塁への送球(けん制)動作に変更することである。
75.07d)本文中の「投球に関連する動作」を「投球動作」に改める。
126.02a)(1)を次のように改める。(下線部を改正)
 投手板に触れている投手が、5.07a)(1)および(2)項に定める投球動作に違反した場合。

これは言葉の解釈についてより分かりやすく、文言の改定が行われた部分です。
数年前から議論されてきた、いわゆる「二段モーション」に関する部分の規則が整理された形となっており、これに関して「二段モーションがアマチュアでも完全に解禁された!」とするネット記事を見ましたが、それは誤りです。いわゆる「二段モーション」についての基本のルールは、これまで通りプロではお咎めなし、アマチュアでもランナーがいないときはお咎めなしですが、ランナーがいる場合は「ボーク」が宣告されます
※以下訂正(5/2)
自由な足を上下させたり、投球動作の途中でグラブを 叩いたりすることは、規制する根拠がなくなり、今後は投球動作の一部とみなすという結論に至りました。従って、走者がいる場合に、このような動作を行って投球した場合には ボークは宣告しないことになります。しかし、塁への送球 (けん制)に変更した場合は、投球動作から塁への送球に変更したという理由で“ボーク”が宣告されます。また、投球動作を一時停止した場合には、打者に投球しても、塁への送球に変更しても“ボーク”となるのは今までどおりです。
今季よりこれまで「二段モーション」と呼ばれてきた投球動作の一部は有走者時に行っても、ボークとはならない。 
(引用:2020 年度 改正規則の解説 ~ 改正規則と規則適用上の解釈について ~  解説 日本野球規則委員会)
今シーズンより、アマチュア野球でもいわゆる「二段モーション」については、ランナーの有無にかかわらず完全に「お咎めなし」となりました
この規則はここ最近議論されたばかりに、全国でちょっと混乱を生んでいますね…

〇走者が打球に当たった場合ルール

15.05a)(4)の末尾に次を追加する。
 (走者については、6.01a11参照)
85.09b)(7)前段を次のように改める。(点線部を削除、実線部を中段から移動)
 走者が、内野手(投手を含む)に触れていないか、または内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールに、フェア地域で触れた場合。5.06c66.01a11参照)
95.09b)(7)【注2】の全文および冒頭の「内野手を通過する前に、」を削除
 する。
13)補則「ボールデッドの際の走者の帰塁に関する処置」()(e)(2)本文を次の
 ように改める。(下線部を改正)
 フェアボールが、内野手(投手を含む)に触れる前に、フェア地域で走者または審判員に触れた場合。または、フェアボールが、内野手(投手を除く)を通過する前に、フェア地域で審判員に触れた場合。

※「点線」が打てないので色を変えています
ランナーがフェアの打球に当たったらアウトになる、というのは多くの野球人が知っていることですが、その部分の特にその例外の規則については、解釈が揃わない部分がありました。そのため、今回よりわかりやすく文言が改定されました。先ほどの投球動作に関する規則改正と同じく、これに関しては「アウトになる範囲が広くなった(可能性が高くなった)」としている記事を見ましたが、それは誤りです
「当たったらアウト」の“原則”は変わりません。その上で、内野手(投手含む)が一度守備行為(グラブをはじめ身体に当たったりエラーしたり)をした打球に関しては、当たってもアウトになりません。
以下補足説明(5/2)
この改正は、「走者が、フェアボールにフェア地域で触れた場合」は原則として、すべてアウトであることを明確にしたものです。打球が内野手を通過したかどうかは問わないことになり、これまでのわれわれの規則解釈を変更するものです。
(引用:2020 年度 改正規則の解説 ~ 改正規則と規則適用上の解釈について ~  解説 日本野球規則委員会)
「当たったらアウト」の“原則”が変わらないことは間違えないのですが、打球が内野手を通過したかどうかは問わないことになり、昨年までの規則解釈が変更されました。

〇結論に戻って…
つまり、今年度の規則改正については、
・日本で適用されていない部分
・規則の文言を改定、または補足
のみで、試合を進めるうえで必要な大きな変更はない、ということになります。

来年は特に「スリーバッターミニマム」の部分が気になるところですが、ひとまず今年は、早く野球ができること祈りつつ日常が戻ってくるのを待ちましょう。


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コメント

  1. 二段モーションについてですが、「BFJ規則委員」「全軟技術委員会」「高野連審判員」に確信しましたがアマチュアでも今年より規則文面通り走者がいても解禁になっています。
    自由な足を上下させたり、投球動作の途中でグラブを叩いたりすることは、投手の投球パフォーマンスに直接影響を与えることは無く、打者が受ける影響もほぼないと考えられることから、規制する根拠がないという結論に至ったということです。

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    1. コメントありがとうございます。 自分も今一度資料を収集し学習し直したところ、ご指摘の通りであることが分かりました。 本日(5月2日)、内容の一部訂正を行いました。 ご指摘いただきありがとうございました。 現在の社会情勢のおかげで審判をする機会がなく、今年度の規則改正についてきちんと教わる機会も失ってしまっています。今後とも情報共有のできる方がいて、また増えてくださったら幸いです。 よろしくお願いします。

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  2. フェアの打球に走者が合ったった場合も原則アウトです。
    今までは内野の守備機会がない場合はインプレイでしたので大きく変わっていますよ。
    例外は完全に股の間を抜けたか、一歩も動いていない内野手のすぐ側方を抜けた打球で、かつ他の内野手に守備機会がない場合のみになります。

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