野球人の3割しか知らない:たったの15cmの差で…

こんにちは、メルマウです。

前回の投稿で、規則6.01(g)について書きました。
今回はそれに似て非なる、【注4】のプレイについて書いていきたいと思います。

〇まず今回の概要
6.01(g)【注4】投手が投手板を正規に外して走者を刺そうと送球したときには、捕手が本塁上またはその前方に出ることは、正規なプレイであって、打者がこの送球を打てば、かえって打者は守備妨害として処理される。

前回の投稿では、三塁ランナーがスクイズプレイや本塁盗塁をした際は邪魔をしてはいけない、邪魔をすると打撃妨害とボークが課される、というルールについて扱いました。

ただし、この【注4】にあるように、ピッチャーが投手板(ピッチャープレート)を正しく外してから同様のプレイが起きた場合は、全く逆に「守備妨害」が宣告されます

キーポイントは投手板です。

〇そもそもピッチャーとは
ピッチャーは9人の野手の中でも異色の役割を持っています。
1試合の中でずっとボールを持っているのはピッチャーだけです。
そしてピッチャーは唯一バッターに対してボールを投げる(投球する)ことができるポジションです。

もちろん、打球が飛んでくればそれを処理することもできます。ピッチャーは内野手の一員でもあるわけです。

それだけ特殊なポジションなので、ルールがたくさん設けられ色々な制約が決められています。当然、ピッチャーと内野手では適用されるルールも異なります。

その区別をつけるためにあるのが投手板なのです。

〇触れていれば「投手」、触れていなければ「野手」
ピッチャーがバッターに対して投球するときは、手からボールが離れる瞬間まで投手板に触れていなくてはいけません。また一塁・三塁に牽制をするときには、投手板に付いたままであれば必ずボールを投げなければいけませんが、投手板から足を外した場合は投げるフリ(偽投)だけでもOKです。
※二塁だけは投手板を外さなくても偽投できます。

投手板に触れている状態でボールを投げる場合は「投手」としての「投球」
投手板を外して投げる場合は「内野手」としての「送球」となります。

〇ホームに投げるときはどうなるのか
ピッチャーが投手板に付いている状態からは、どこに投げる場合もこの扱いは変わりません。

ホームへ向けてボールを投げるときも例外ではありません。

・投手板についた状態で投げるとき
ホームにはランナーはいませんから、この場合は打者に対して投球することになります。
当然、バッターはこのボールを打つ権利があります
これが前回の投稿で記したポイントです。

・投手板を外した状態で投げるとき(←今回のメイン)
この場合は内野手としての送球をすることになります。
前回の投稿であった、三塁走者のスクイズや本塁盗塁の場合に、投手がランナーの動きを察知してすぐさま投手板から足を正しく外してホームへ(キャッチャーへ)投げた場合は、そのボールは守備行為のための「送球」なので、打者は打つことはできません

もし打ってしまったり、実際に打たなくても打とうとしたりしてしまうと、それは守備を妨げてしまうことになり、守備妨害が宣告されることになります。

〇バッターはどうすればいいのか
なので、バッターはピッチャーをよく見ておかなくてはいけません。
ピッチャーが投手板から足を外したならば、すばやくバッターボックスから離れて、ホームでのプレイに場所を譲らなくてはけません。

もしこれで妨害となってしまった場合の処置としては、
規則6.01(a)打者または走者の妨害
次の場合は、打者または走者によるインターフェア(妨害)となる。
(中略)
(3)0アウトまたは1アウトで、走者三塁のとき、打者が本塁における野手のプレイを妨げた場合。この場合、走者がアウトになるが、2アウト後の場合は打者がアウトになる。
と規定されています。貴重な得点の機会を失ってしまうことになりますので気を付けましょう。

〇投手も気を付けないといけない
では、ピッチャーは三塁ランナーが走り出したらどうすればいいでしょう。
投手板を外せば守備行為のみできるようになります。当然ながら投げずにそのまま三本間でランダウン(挟殺)を始めることもできます。

ただ、投手板を外す際は必ず軸足を後ろに外さないといけないので注意しましょう。
また、ランナーがいるときはあまりいないとは思いますが、ワインドアップから投手板を外すことはできないのでその点も注意しないといけません。
右投げのピッチャーなら三塁ランナーは見えていますので、少々有利かもしれません。
左投げのピッチャーは見えないので、仲間からの声があった際などに慌てないようにしましょう。
投球動作を始めてしまったら、もう投球以外のことはできません。

〇審判員は…
以上のように、たったの6インチ、約15㎝の幅しかない投手板から足を外すか外さないかで大きな違いが生まれます。
ランナーがいるときは、ハンズ・オン・二―セットでしっかりと構えて、ピッチャーを注視しましょう。
特に球審はこの場合、マスク越しに、しかも正面からピッチャーを見ることになるので、正直ちょっとキツイです。
得点の機会があるときは特に緊張感を高めましょう。

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