野球ルールのよくある勘違い:「“振り逃げ”」は振ってなくてもいい【野球の造語シリーズ】

こんにちは、メルマウです。

連休最終日ですね!
緊急事態宣言が延長されまだまだ我慢の日々が続きますが、今後とも前向きに頑張っていきましょう(^^)

自分は気分を上げるために、今日このあと髪を切ってもらいに床屋へ行ってきます。(笑)

さて、今回は「野球ルールの造語(規則にはない俗称)」の代表格である「“振り逃げ”」について記していきます!
付随するルールについても書いていきますね。


〇まずは概要
規則のこれについて書かれている部分を確認しましょう。

5.05 打者が走者となる場合
(a) 次の場合、打者は走者となる。
(中略)
(2) (A)走者が一塁にいないとき、(B)走者が一塁にいても2アウトのとき、捕手が第3ストライクと宣告された投球を捉えなかった場合。
(中間後述)
(3) 投球が地面に触れた後、ストライクゾーンんを通過してもボールであり、(中略)
ただし、2ストライク後打者が打ったがバットに当たらなかったときは、捕手がそのままつかんでも“捕球”したものとはみなされない。

5.09 アウト
(a) 打者アウト
打者は、次の場合、アウトとなる。
(中略)
(3)0アウトまたは1アウトで一塁に走者がいるとき、第3ストライクが宣告された場合。
【注】0アウトまたは1アウトで一塁(一・二塁、一・三塁、一・二・三塁のときも同様)に走者がいた場合には、第3ストライクと宣告された投球を捕手が後逸したり、またはその投球が球審か捕手のマスクなどに入り込んだ場合でも、本項が適用されて打者はアウトになる。

この2ヶ所に書かれていることが、“振り逃げ”の基本的なルールです。
お気づきのように、「振り逃げ」という用語は一切登場しません
が、ひとまずは“振り逃げ”として進めます。

ますこれが発生する条件としては、
一塁にランナーがいないとき(アウトカウント関係なし)
2アウトのとき(ランナーの所在関係なし)
です。それ以外の場合(0アウトか1アウト、ランナーが一塁にいるとき)はできません。

上記の条件で、“振り逃げ”ができるのは
第3ストライクが宣告されたものの、キャッチャーがちゃんと捕れなかったとき
です。(※例外あり、後述)

ポイントは第3ストライクであることなので、空振りしたか否かは関係ありません
見逃し三振のときでも、キャッチャーがボールをこぼしたり逸らしたりしたら“振り逃げ”は可能です。
ただそういった場面はあまり多くなく、ほとんどの場合は空振りをしたときに起こるので、このような俗称が付いたものと思われます。

自分は過去に一度だけ、見逃し三振の投球をキャッチャーが落とした場面に遭遇しました。
見逃し三振のポーズを中断して“振り逃げ”のジェスチャーをする羽目になりました( 一一)

また、キャッチャーが投球をちゃんと捕れなかったとは、要するに一発で掴めなかった時であって、
・いったんミットに入ったものの落とした
・ボールを弾いた、逸らした
・ボールが届き切らずバウンドしてから捕った(規則5.05(a)(3)↑上記)
場合などです。

さらに、第3ストライクまたは第4ボール(=四球)の投球がキャッチャーや球審の用具や体に挟まった場合、本来であればバッターには一塁が与えられ、塁上のランナーも1つ進塁できます
(規則5.06(b)(3)(I)、5.06(c)(7)【原注】参照)
しかしながら、“振り逃げ”ができない条件である0アウトか1アウトでランナーが一塁にいるときは、第3ストライクの投球がこのように挟まった状態になっても、打者は一塁に行くことはできずアウトが宣告されます。

〇“振り逃げ”できる瞬間に走り出す!けど…
三振なのに出塁するチャンスがある…!と思って全力疾走したいのはわかりますが、できないケースが決められていますので、落ち着きましょう。
選手もしっかりと場面を頭に入れておいてください。

以前広島カープの菊池選手が、「“振り逃げ”できる!」と思って(?)走り出したところ、味方の一塁ランナー松山選手が騙されてしまい(?)、キャッチャーからの送球によりタッグアウトになるという、珍しい「三振ゲッツー」がありました。


バッターが一塁に着く前にボールが一塁に転送されれば、バッターはアウトになります(フォースプレイの要領)。または直接バッターにタッグしてももちろんアウトです。

ただ、ボールが捕られていないことに気が付かずにバッターが走り出さないこともあるかもしれません。その場合には別でアウトになる基準が決められています。

5.05(2)
【原注】第3ストライクと宣告されただけで、まだアウトになっていない打者が、気が付かずに、一塁に向かおうとしなかった場合、その打者“ホームプレートを囲む土の部分”を出たらただちにアウトが宣告される。

“ホームプレートを囲む土の部分”とは、例えば多くのプロ野球の球場のような芝のグラウンドでは、各塁付近に土の部分があり、ホーム付近はバッターボックスを囲むようにして丸く区切られている、あの部分のことです。

阪神甲子園球場を含め全面土であるような球場では、この区切りをラインと同様白線で書くこともあります。これを一般的に「ダートサークル」と呼びます。

もしバッターが走り出さずとも、この区切りから出てしまえば「走塁の意思なし」と判断され、自動的にアウトが宣告されます。

〇2アウトの場合はキャッチャーは臨機応変に?
“振り逃げ”はフォースプレイです。そのため、2アウトの場合は必ずしも一塁に送球し打者をアウトにしようとする必要はありません。

例えばランナー一・二塁で、三塁ベンチの方(向かって左手の方)へボールを弾いてしまった場合は、三塁に投げれば二塁ランナーをアウトにできるかもしれません。
また満塁だったらもっと楽で、落としたり前に弾いたりしたら、目の前にあるホームベースに触れさえすれば三塁ランナーをアウトにできます。投げる必要すらありません。
再三書きますが、状況を頭に入れておくのはとても大事です。

〇再登場!ハーフスイングと“振り逃げ”
以前ハーフスイングの判定について記事を書いた際、現巨人菅野選手の高校時代に発生した、「“振り逃げ”3ラン」なる出来事の映像を共有しました。
以前の記事(このブログで一番アクセスいただいている記事です)

この時のように、特に第3ストライクとなりうるカウントの投球をしっかり掴めず、バッターがハーフスイングをした場合は、球審から塁審へのリクエストで判定が「スイング」になる=“振り逃げ”ができる条件が揃うかもしれません。
そのため、キャッチャーは塁審に聞いてくれるよう球審に頼みながらも、念のためバッターにタッグをしておきましょう。

〇“考えて”野球をしているといいことある
ということで、今回は”振り逃げ”についてでした。
しつこいようですが、これは状況によりプレイが色々変わってくるものになっています。
選手も審判員も、常に場面を頭に入れて、あらゆるプレイに対処できるようになりましょう。


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